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第14回 3Dに学ぶ発想

 業務の必要性から3D(3次元)の動きのあるものが必要になり、制作に取り組んでいます。 今回はその中で感じたことを述べます。  20年ほど前にCADを少しばかりかじったことがあり、3Dソフトの習得はそんなに時間もかからないだろうと、高を括っていました。
 「たかが1次元増えるだけ」と単純に考えたわけではないのですが、判断ベースの「20年前のCAD」は今から 見るとまるでおもちゃレベルで、これを「実績」と思い込んでいたのは大いなる間違いでした。
 「実績」は消えません(消せません)が、過去の実績が有効になるかどうかは別の問題です。特に進歩の著しい コンピュータ関連においては、昔の実績はほとんど意味を持たないことを改めて思い知らされました。

これまでと異なる点は

 これまで、多くのイラストを描いてきましたが、すべて2D(2次元)の世界で、完成品も1面から見られるだけです。 ですから、対象物を見る場合もある一面から見るだけで済みます。どの面、どの角度から見るのが良いかを考え、 見えない部分は完全に無視できたのです。
 これに対し、3Dはどの方向からでも見られてしまいます。たとえ対象物が台の上に置かれていたとしても、 底面も見られるケースもあります。

 もう1つの違いは、これまでのように「線」で描くのではなく「面」で描く必要があることです。 2Dの世界では、境界線は単に線を引いておけば良かったのでが、3Dの場合はワイヤーフレームの場合を除き、 単なる「線」は最終形態では埋もれて消えてしまいます。 1本の線で済んでいたものが、面と面の角度差や段差を設けて表現する必要があります。
 つまり、「物を作る」、「物を組み立てる」に近い感覚での作業となります。

3次元空間に描く

 3次元空間に目的のものを描くことの難しさにも最初は戸惑います。人は手振りで物の形や動きを表現します。 これは「手」という自分の思った通りに3次元空間で動かせるツールがあることで可能になっています。
 コンピュータの場合、2次元空間でしか移動できないマウスを使って3次元を表現しようとするところにも困難さがあります。 それでも慣れるに従って描くスピードも上がってきます。
 最終段階では、多面からの確認は必要ですが、慣れるに従い、複数面からの確認・修正の頻度もどんどん下がってきます。 人間の持つ順応性に改めて驚きを覚えます。

3Dの考え方

 このように3Dソフトで作業をするようになって、物の見方も少し変わりました。 それは、これまで無視していたものにも注意を払う、興味を持つようになったということです。
 「あの人は裏表のある人だ」、「2面性を持つ人だ」などと言うことがあります。これは2Dの発想から出てきた言葉です。 つまり視点が表と裏など、限定されています。
 また、アイデアを考える場合も「多面的に見て」いう場合があります。これも2Dの発想の延長線上です。 確かに面を多くすれば3Dに近づきます。でも最初から3Dで考える方法もあると思います。

 少し話は反れますが、人間は誰も見ていない所では手を抜く、あるいは気を抜くことが多々あります。 エチケットをわきまえている人でも、個室状態のトイレの中ではエチケットを守らない人もいます。これは 「誰も見ていない」という環境が「手を抜いても良い」と判断しているのではないでしょうか。
 たとえば、標準的な和式トイレの水洗レバーの磨耗具合は、ほとんどの人が足で押していることを物語っています。 中には「足で踏みつけるもの」と思い込んでいる人もいるかも知れません。新幹線のように足で踏む形式の場合を除き、 あのレバーは手で押すべきものです。「他人が足で押したものなど汚くて手で触れるか」と思われるかも知れません。 私も若い頃は足で踏んでいました。でもあるとき、エチケットとは関係ない話でしたが、 「誰かに見られているから何かをするというのでは寂しいだろう」と教えられてからは、トイレットペーパーを使って 手で押すようにしています。無駄とは思いながらも、押したあと、ついでにレバーを拭くようにしています。

 「見られているからやめておこう」で自分を制御したり、「人に良く思われたいから何かをしよう」で行動を起こす機会は 今もゼロにはできませんが、できる限り減らそうと心掛けるようにしています。
 別に「エチケットのすすめ」の話ではなく、申し上げたいのは、発想や思考があらゆる面から自然とできるようになれば
ベストだと考えます。
 これを発想の3D化と勝手に定義しています。

 見えない部分に着目したり、推理を働かせたり、また人が滅多に見ない角度から見てみるというのも、ときには楽しいものです。

 見えない所にも配慮する、見えない所も見ようとする姿勢が新たな「発見」、「発想」に繋がると考えます。

挿絵のイラストについて

 2Dのものは、イラストレータで作成後GIF形式に変換しています。
 3Dアニメーションは、アニメーションマスター(販売:アートウェア(株))でモデリング後、 アクションを付けて出力したものを、データを軽くするためにGIFアニメーション形式に変換して掲載しています。 データを軽くするため、小さなサイズで出力したため、細部は見えませんが、実際はRS-232C、ディスプレイ、プリンタ、 USBの各コネクターなど1ピン1ピンを、オス、メスの区別に至るまで、手を抜かずすべて制作しています。 なお、サンプルは単純なパソコンですが、「人間」の場合は比較にならないほどに奥が深いです。

2Dと3Dアニメーション