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私の発想法

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第52回 後ろ姿に現れる人格


仏像の後ろ姿

 薬師寺さんが所蔵する薬師如来の脇侍に日光菩薩、月光菩薩がおられます。
 先般の薬師寺さん境内での展示会で、この仏像の後ろ姿の切り絵作品を展示
したところ、大層人気をいただきました。
 通常の拝観時は見ることが出来ないアングルで珍しいこともあるのですが、
それ以上に「たとえ見えない部分であっても丁寧に仕上げる」という日本の
文化の表れである美しい背中の仏像がモチーフであったからと思います。
 西洋の彫刻の中には、「見えない(見ない)部分を美しく仕上げるのは無駄」
とも受け取れる合理的な考え方の作品も眼にします。

人の後ろ姿

 街を歩いていて、前を歩く人の姿を見て「魅力的な背中」と感じさせる人が
います。ピシッと背筋を伸ばした姿勢の良さもあります。少なくとも、猫背や
一歩ごとにふらついていたのでは、魅力どころではありません。
 ただ、外観上の姿勢だけではなく、それ以上にその人の人格が現れているよ
うに思います。

「顔」の責任範囲

 「子供のときの顔は親の責任、でも四十を過ぎたら自分の責任」とも言われ
ます。その人の長年の生きよう、考えようが顔に定着するであろうことは理解
できます。ただ、顔は鏡で簡単に見ることができ、顔面体操でみかけ上の
「良い顔」を訓練で作ることはできます。
 世の中、上手に作り笑顔をする器用な方もおられます。でも、そのような「顔」
はしばらく付き合えば、すぐに化けの皮がはがれてしまい、逆に人格が疑われ
ます。

人格はどこに表れる?

 「人間は表よりも裏(背)が大切」と言われます。
 また、「子供は親の背中を見て育つ」とも言います。
 ただ、後ろ姿は合わせ鏡か、カメラを使わないと見ることができません。
 仏像には徳の高さを体から放射する光(後光)で表現します。
 人格は知らず知らずの内に背中、後ろ姿に表れるように思います。
 「魅力的な背中」と思わせた人は「魅力的な人格」を備えた人ではないで
しょうか。

 少なくとも、自分の後ろ姿を見た人に「素敵!」とまでは行かなくても
「元気が出る」と思われるようになりたいと、日々を過ごしたいと思います。



(更新:2010.12.1)