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切り絵作品ギャラリー

       





2002年夏、友人に勧められ滋賀県高月町、向源寺の十一面観音像を拝観、その美しさに心打たれ「モノトーンで表現したい」と思ったのが仏像切り絵への取り組みのきっかけでした。
この仏像を拝観していなければ、モノトーン切り絵に取り組んでいなかったはずです。そして当然のことながら切り絵作品の展示・講習会を開催することもなく、作品をご覧頂いた方や受講頂いた方とのご縁もできていません。
そう思うと、この仏像との出会いは大きな広がりを与えていただきました。本当に素晴らしく、また有難いことと思っています。
この仏像はアングルを変えたものなど、掲載の作品の他に5作品を制作しています。


■奈良 新薬師寺 十二神将立像 伐折羅大将(国宝)


向源寺の十一面観音を拝観したとき、私の眼には美しいモノトーンの仏像に映りました。
それに対し、お寺の授与所で購入した写真はカラー版です。私の受けたイメージとは大きく異なります。
図書館や書店などで、自分のイメージ通りのものを探しましたが、どうしても見つかりません。
世の中にないのなら仕方ない、自分で作るしかないと思い、切り絵で挑戦することになります。
ただ、自分の受けたイメージ通りのものがそんなに簡単にできるはずもありません。まして、学生時代から技術系1本で来た身、絵の描き方など、中学生以来学んでいません。
自分で納得できるイメージにデザインできず悶々としていたとき、ふと新薬師寺の十二神将でトライしたとき、ハイライト部分だけに注目する手法を思い付きました。
掲載の作品は、何度もデザインを繰り返し、無駄な「もの」を徹底的に削ぎ落とした、現時点での「最終形」です。
十二神将の全員を作品にした後、目的の十一面観音にトライ、やっと目的に近い上記の「デザイン」になりました。
以降、仏像切り絵の虜になり、業務の合間、自分の時間をすべてつぎ込むことになります。
その意味で、この仏像との出会いも、私にとっては大きなターニングポイントとなります。
この仏像はアングルを変えたものなど、掲載の作品の他に3作品を制作しています。


■奈良 唐招提寺 千手観音立像(国宝)


私は仏像切り絵を始める、はるか以前の小学生の頃からの仏像好きです。一番好きな仏像は千手観音様です。中でも、唐招提寺の像が一番好きです。
高校生の頃、学校帰りに寄り道をして拝観、閉門時間も忘れて佇んでいたら、僧の方に「閉山時間なので締めますよ」と促されて、初めて我に返ったこともあります。
沢山の手にいろいろなものを持っておられ、ありとあらゆる課題を一気に解決して頂けそうなところがたまらないのです。
千の手には、それぞれ眼を持っておられます。従い、その前に立つと千の眼ですべてを見透かされるので、何も隠すことなく、また何ら飾ることなく、自分をさらけ出すことができるように思え、気持ちが軽くなるのです。
この仏像はアングルを変えたものなど、掲載の作品の他に5作品を制作しています。


■奈良 興福寺 八部衆立像 阿修羅(国宝)


初めて拝観したのは高校生のときです。学校は奈良市内で興福寺に近いこともあって、面白くない授業を抜け出しての拝観でした。それから今日まで何度と覚えきれないほど拝観しています。
この仏像の一番不思議なことは、拝観する度に表情が変ることです。たとえば、あるときは凛々しさを感じたのに、次に訪れたときは今にも泣き出しそうな気持ちを押さえ込んだ感情を感じたりと、会うたびに大きく異なります。
光の当て方、見るアングルなどで大きく変ることは周知のことですが、私はそれだけではないと思います。
自論ですが阿修羅像に限らず、仏像を拝観したとき、見る側の感情・精神状態を鏡のように映し出しているからではないかと思っています。
特に正面のお顔だけでなく、左右のお顔も合わせると、さらにいろいろな表情を見せてくださいます。
以前のガラス越しでの拝観から、新たな展示方法になってから、写真集で見るのではなく、生の自分の眼で多様な表情が見ることができるようになり、愉しみが増えました。
この仏像はアングルを変えたものなど、掲載の作品の他に14作品を制作しています。 1つの仏像でこれだけ多くの作品を作れるのが不思議です。それでもなお、これからもさらに作るのではないかと思います。


■奈良 薬師寺 薬師如来坐像(国宝)


薬師寺さんは、自宅から車ですと10分足らずで行ける距離です。
高校生のとき、面白い法話で有名な管主だった故高田光胤氏が高校へ出向いて来られ「心」をテーマに講和くださいました。
何分にも多感な年頃、説教ぽいことにはつい反感を抱くものですが、不思議とすっと受け入れることができました。もちろん面白い話術の為せる技もあったのでしょうが、それ以上に見事に私にとっては的を突いた内容であったと思います。
講和を聞いてから間もなくして、初めて拝観しました。日光菩薩・月光菩薩を両脇侍に従えた薬師如来坐像に神秘さを感じました。 そのときは、現在のような立派な金堂ではなく、古びた、決して立派とはいえないお堂に静かに座っておられるイメージが今も記憶にあります。
この仏像を拝観されるときは、右手の掌に刻まれている法輪を見逃さずにご覧になることをお薦めします。作品では見立っていますが、実際は見えるか見えないかぐらいの繊細な線で描かれています。ですから、お手元にオペラグラスや双眼鏡があれば持参ください。もし、ないときは心眼でもってご覧ください。
この仏像はアングルを変えたものなど、掲載の作品の他に3作品を制作しています。


■奈良 東大寺 盧舎那仏坐像(国宝)


奈良のランドマーク的存在の東大寺、そして東大寺と言えば大仏様です。
正式名称は「盧舎那仏坐像」、奈良時代に創建、その後何度か戦火に合って建物もろとも焼け落ちていますが、その度に復興されてきました。
現在拝観しているお顔は江戸時代、胴体部は室町時代の復興です。 台座の蓮弁は創建当時のものです。観音菩薩の群像や丸顔の仏様が線刻されています。
私はこのアングルから見る大仏様が一番好きです。ただ、実際にこのアングルから見上げますと、柱や銅製の供花なども一緒に視界に入りますので、こんなにすっきりした状態で見えるわけではありません。

大仏殿の中には、大仏様の鼻の穴と同じ大きさと言われる四角い穴が開いた柱があって、通り抜けることができます。 最初からこのイベントのために開けるなら、丸や楕円にするはずです。
諸説ありますが、多分大工さんが間違って開けたものだろうと言われています。
間違った大工さんも吃驚したでしょうけど、それ以上に責任者である宮大工の棟梁は、間違ったまま使うことに大決断したことでしょう。
想い出に通り抜けにトライする観光客の行列がよくできます。ただ、穴が四角いこともあって、自分のヒップ(珍しいケースではバスト)サイズに自信過剰(?)な人がいて、途中でつっかかる人もおられます。くぐるときは、十分に自分を知った上でトライしてください。
この仏像はアングルを変えたものなど、掲載の作品の他に4作品を制作しています。


■奈良 円成寺 大日如来坐像(国宝)


大仏師運慶の若き頃のデビュー作です。20歳代の若さで、しかもデビュー作として仏界の頂点とも言うべき大日如来を彫るという大胆さに驚かされます。
それまでの仏像とは一線を画した若々しい表情と、理想的なプロポーションは見事です。さらにそれまであまり例のない自分のサインを仏像に入れています。 天才でもあり、また自信もあったのでしょう。
この仏像はアングルを変えたものなど、掲載の作品の他に4作品を制作しています。


■奈良 秋篠寺 伎芸天立像(重文)


伎芸天としては、日本唯一の像です。しなやかに体をひねらせた女性的な美しい立ち姿の魅力に、時間を忘れて見入ってしまいます。
拝観されるときは、ゆっくり観られるよう時間に余裕を持って行かれることをお奨めします。
この仏像はアングルを変えたものなど、掲載の作品の他に3作品を制作しています。


■法隆寺 観音菩薩立像(百済観音)(国宝)


八頭身ですらりと美しいこの観音様は、これまで何度も拝観し、また多くの写真集でも見て既に作品にもしていました。
あるときふと見た写真集で目元がすごく涼しげに見えたので、ルーペを持ち出して見てみると、奥二重のように思えます。どうにも気になるので、双眼鏡を掴んで車を約10分走らせ法隆寺へ出向きました。実際の仏像を見ると、微妙な奥二重のように見えました。
この小さな発見が嬉しくて、この目の美しさ、涼しさを表現したいとの思いで新たにデザインをし直し、制作しました。
この仏像はアングルを変えたものなど、掲載の作品の他に2作品を制作しています。


■奈良 中宮寺 菩薩半跏像(如意輪観音)(国宝)


「美しい」の一言に尽きます。展示会でこの仏像の作品を出展していないと、必ず「中宮寺の仏像はありませんの?」と聞かれます。
特に多くの女性に慕われているようです。
この仏像はアングルを変えたものなど、掲載の作品の他に6作品を制作しています。




(更新:2011.1.20)