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第2回 一瞬のひらめきを逃さず定着させる(固定する)方法

 「ひらめき」は第一回の「問題意識の持続と「ネタ」探しの練習法」(この続きに記載)で述べましたように問題意識を持っていてこそ生まれます。
 また、「ひらめき」はその名の通り前触れもなく、ある瞬間に突然に現れ、次の瞬間に消え去るものです。 この「一瞬で消えるもの」をどうやって定着させる(固定する)かが重要なポイントです。 その方法について私のやりかたを紹介します。
 最良の方策は、いかに「漏らさずメモする」かです。たいていの人は「今更、メモの取り方など言われなくても」と思われると思いますが、私の場合、 メモのコツを掴むまでかなり見逃したものがあるように思います。 「先ほど何か思いついたけれど、何だったか忘れてしまった」というケースはまだ良い方で、「ひらめいたこと」すら思い出せないものがあったと思います。 そしてメモのコツをつかみだしてから、特許の出願件数もぐんと増加の傾向をたどりました。

「ひらめき」について

 おおよそ「ひらめき」は、非常にメモが取りにくい状態、とんでもない状況にフッと沸いてくるものです。
また、夢に似たものがあり、現在もっとも問題(課題)としているものと関係のないもの(以前、課題にしていたものが多い)に対するヒントなど、脈略なく出てきます。
 文章のように長い「ひらめき」というのもありません。つまりメモをする必要があるのはキーポイント(キーワード)だけです。これさえ残っていれば、あとで記憶を辿ることができます。
たとえば、私の経験では次のようときに多く遭遇しています。

 会議の最中、それも自分が発言しているときや、プレゼンテーションの最中
 発言しているときは、人の話を聞いているときよりも、脳がより活発に活動していることからその副産物として出てくるように思います。

 気の合った友達と自由に話しているとき br>
 朝、目が覚めかけた「まどろみ」状態のとき

 夜、床に入り、そろそろ眠りに落ちようかとするとき

 車の運転中
 前の車や対向車に書かれている文字や絵柄を見た瞬間、あるいは道路わきの看板などを見たとき。たまにラジオから聞こえるDJの話がヒントになることもあります。

 上の例はどれもメモがとりにくい状態です。「今はメモできないからあとで。それまで覚えているだろう。」と考えているうちはダメです。あとになると、ひらめいた内容はおろか、「ひらめいたこと」すら忘れてしまうのが常です。 なんとかして、できるだけ早い時点でメモに残すことを心掛けます。

メモの取り方

1のケース:
 資料を確認するようなふりをして、タイミングを見つけてメモします。
たとえば、OHPを使っているときはそのフィルムの隅に小さく書き込むことができます。
昨今パソコンのプレゼンソフトを利用しているときは、この方法が使えず、苦戦します。
パソコン上でメモ作成ソフトを開くと、その操作もすべてスクリーンに写し出されるため、プレゼン画面が不自然な動きになります。この場合は、手元の資料を確認するようなふりをしてメモする以外にありません。

2のケース:
 「そのネタいただき!」とでも言って、冗談の振りして手帳を取り出し、できるだけ周りの雰囲気を壊さないよう配慮してメモを取ります。

3および4のケース:
 睡魔の支配で「体は動かしたくない」という状態で思いつくのですから、極力現在の体制を変えずにメモを取れるようにしておく必要があります。
つまり、枕もとに紙と鉛筆を手を伸ばせば届く範囲に置いておきます。このとき、小さなメモ用紙は不向きです。
A4サイズぐらいの大きなものにしておくと、暗闇の中でも、鉛筆の先を見なくても、寝ぼけながらでもなんとかメモできます。
下敷きも必要としないで書けるもの(たとえば、シャツなどの衣類の芯に使われていた厚紙、包装の箱など)と、鉛筆もBクラスの柔らかなものがお勧めです
。 私は、鉛筆に紐を付け、先にクリップ(洗濯ばさみでも構いません)で厚紙とつないでおきます。こうすると、寝ぼけながらでも手探りで見つけることができます。
そして、仰向けに寝たまま、胸の上に紙を置いて大きな字で書きます。キーワードさえ残っていれば、朝そのメモを見れば必ず思い出せます。
(余談ですが胸の上ででなく、顔や頭の上に紙を置いて書くと、不思議なことに鏡文字になります。たとえ鏡文字でも思い出すには十分です。)
この方法でメモをすると、またすぐに元の「まどろみ」状態または眠りつく直前の状態に戻れ、新たな「ひらめき」が沸いてくる可能性もあります。
なぜなら、あることを思いつくと当然「うれしい」ものです。一種の脳への報酬が与えられたわけで、もう少し続けると、調子に乗って、また別の新たなものが沸いてくることもあります。
また、朝の「まどろみ」の中で、寝る前にひらめいた内容のメモを見て、再度ぼんやり考えることもできます。そしてそこからまた新たなものも見いだせたこともありました。
少なくとも体を起こして別の部屋に行かないとメモできないという状態は最悪です。特に冬の寒いときなどは、「明日起きたときでも覚えているだろう」と思いがちです。でも明日の朝には完全に消失しています。

5のケース:
 信号で停止したときにメモを取ります。もし、高速道路など信号のない場合は、まず安全に停止できる場所を見つけて停止します。でも、なかなか都合よくそのような場所がないのが現実です。
そのため、私は、車にデジタルメモ録音機(何かの景品でもらったもので、ボタン1つの操作で約30秒間音声を録音できるもの)を搭載しています。これを前方から目をそらさず、運転に支障なく取れる場所に置いておき、思いついたことを録音できるようにしています。
(安全運転という面では、お薦めはできませんが。)

筆記具について

 夜、枕もとに置いておくのは、先にも述べましたが、「B」クラスの鉛筆がその書きやすさの面でお薦めです。アイデア商品グッズとして売られている「暗闇でも文字が書けるライト付ペン」などは必要ありません。 昼間はボールペンがお薦めで、いついかなる状態でも携帯します。 特に外出のときは刺激も多く飛び込んでくることから「ひらめく」に遭遇することも多いのです。 ペンさえあれば紙がなくても、最悪「手」があります。手に書いておくと、短い期間に何度も見ることになり、さらに別のアイデアに膨れあがったり、全く関係のないものに飛び火して、別のアイデアに結びつくこともあります。
 では、「手」のどの部分に書くかですが、まず手のひらは、いくらボールペンと言えども鞄をもったり、トイレへ行って洗ったりしているうちに消える可能性があります。
 といって、手の甲に書くと、人に見られて恥ずかしい思いをしたり、商談中に相手に見られ、印象を悪くする可能性もあります。
そこで、私が書く場所として選んだのは、腕時計の下に隠れる部分です。(女性の場合は、腕時計も小さく、隠れる面積も小さなことから困難かも知れません。) 時計が腕にぴったり留めていた場合は別ですが、通常は「あそび」がありますので、時計を見るたびに時計がずれて、その下に書いた内容の一部が見えます。移動中の車中でふと目にとまり、時計を見るしぐさで、自然に見直すことも可能です。
トイレの中でも思い付くこともけっこうあります。少々尾籠な話で恐縮ですが、排泄行為そのものはある種の興奮と快感が伴い、そのついでに「ひらめき」も飛び出してくるものと勝手に解釈しています。その意味からもトイレに行くときもボールペンは欠かせません。 私の場合、意外とひらめかないのが入浴中です。リラックスして気持ちよく入浴できる人には出るのかもしれません。しかし、私は世にいう「烏の行水」タイプの人間で、入浴があまり好きではありません。 自宅でも温泉へ行ったときでも10分程度であたふたと出てくるため「ひらめき」も出てこないのだと思います。
 ただ、入浴中にひらめいた場合は、ペンがないのでメモを取るのは少々困難です。水中でも書ける紙と筆記具があるようですが、そこまでする必要はないと思います。
 その昔、アルキメデスは浴槽に浸かった瞬間、自分の体の体積に相当する湯があふれるのを見てアルキメデスの原理をひらめき、感動のあまりはだかのまま町中を駆け巡ったというエピソードがあります。 そこまで行かなくとも、入浴中に思いついたときは、そのまま浴室から飛び出して脱衣所でメモを取るなり、家中を走り回るのも良いのではないでしょうか。
 極寒の地でない限り、それぐらいの時間で風邪をひくこともないと思います。

とにかく、自宅内でも外出の際も、筆記具(ボールペン)は必須のアイテムとして携行する習慣を身に付けることをお薦めします。