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第23回 イメージの力と怖さ


 このコラムも第8回以降からイラストを入れるようにしています。 イラストを入れ出してから、このコラムに関して「少しは本文を読もうかという 気になった」とのご感想やご意見を頂いています。 やはりイラストなどビジュアルの威力を今更ながら実感します。

 たとえば、商品の操作説明をする上で正確に伝えるために言葉を長々と書くより、 イラストを入れて「図に示すように操作してください。」の1行の方が正確に、 かつ短時間で伝えることができます。

 ただ、ビジュアル表現はいつもプラスの方向に働くとは限りません。 上に示すイラストは、年配の男性が若い女性に道を尋ねたシ−ンです。 道案内を求められた女性が「2つ目の角のカットサロンを左折して、三軒目です。」 と説明します。
 これを聞いた人は、「カットサロン」の言葉から「理髪店」をイメージしてしまった。 こうなると、「2つ目の角」という言葉より「理髪店」の看板のイメージが強く、 これを目印にして進むことになる可能性があります。
 分かり易いだろうと思って出した情報が、かえって邪魔になります。 単純に「2つ目の角を左折して、三軒目」と言われただけなら、辻や軒の数を数え ながら進み、かえって正確に辿り着くこともあります。

 このシーンの場合、カタカナ(外来語)がいけないのではなく、人によって想像する イメージが異なる可能性のあるものを例に出したのが問題の原因です。 特に会話する人の性別や世代で、想い浮かべるイメージは大きく変わる場合があります。 これを認識していないと、怖い結果を生むこともあります。

 昔、電気製品のマニュアルの注意事項に、「たこ足配線はしないでください。」という 言葉とともに、イラストを入れたのですが、それがまさしく「蛸」の各足の先に 8つの電気製品が接続されている図でした。 「たこ足配線」の名前の由来通りですし、問題ないと思ったのですが、「本当にして、 蛸に接続する人は絶対にないとは言い切れない」との理由で却下されました。

 結果、面白くもなんともないテーブルタップを使った、たこ足配線のイラストに 変更しました。ある意味「笑い話」のようにも聞こえますが、その後何人かの人 に意見を求めると実際以下の2通りがありました。

1 ものの例えだから、蛸のイラストで良いではないか。何もそんなに硬いことを 言わなくとも、常識の範囲で分かるのだから良いのではという意見。

2 本物の蛸を描いてどうする。正確に伝えるのに比喩を使うのは不適当であるという意見。

以降ビジュアル化する場合は性別・世代・対象商品によって、あるいは国によっても 誤解や不適切と指摘される可能性はないか、十分確認するようにしています。

 例の道案内において、できるだけ迷わずに目的地まで行けるようにとの親切心で出した 情報が、逆に混乱を引き起こすかも知れないのです。
 ビジュアル力を今一度考え直し、正しい使い方に留意したいと思う今日この頃です。


(更新:2005.4.1)