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第21回 リスクと面白さ


 数年前から初めた趣味の1つにクロスカントリーがあります。競技をするのではなく、クロスカントリー用の踵の上がる板を履いて、グループで森や丘を歩くもので、ネイチャースキーと言った方が妥当です。
 森の中を登って行くほどに、前方にピークが見えて、そこまで登ればどのような景色が待っているのか、期待が膨らみます。それが、真っ白に輝く峰々の大パノラマであったり、自然が創り出したすばらしい光景であったり、汗して登ったご褒美として、気持ち良さそうに滑れそうな スロープがあったり、ときには次のピークが見え来て「まだ、あそこまで登るのか」と落胆させられたりと、本当に一喜一憂の時間が過ぎて行きます。

先頭を行く

 真っ白な新雪の、誰も歩いていないところに一歩を踏み出すのは実に気持ちの良いものです。 最初はふわーとした感触から徐々に圧雪の反発力を感じ、膝辺りまで沈んだ状態で、ふわ〜んとした感触で全体重がかかって止まります。そして、次の一歩をまた踏み出します。この繰り返しです。
 ただこのとき、気持ちの良さとは裏腹に、体力の消耗は激しいものがあります。 道らしきものが確認できる状態はまだ良いのですが、森の中ですべての凹凸が雪で覆われ、また道標も横殴りの雪で隠された状態で、どのルートで進むか決定するのは精神的にも大変です。 オーバーに言えば後ろに続く人間の運命を担っているわけです。つまり、リスクと面白さが背中合わせの状態とも言えます。

列の中間を行く

 先頭から数人後になると、コースも圧雪され、スーイスイと楽に歩けるようになります。先人が作ってくれた2本の道をトレースするだけですから、気楽に周りの景色も楽しめます。 ウサギの足跡や、普段は高い位置で見上げるだけのアカゲラの巣も、覗き込めるぐらいの位置に見つけることもあります。 ただ、長い期間この状態が続くと、退屈してくることもあります。

列の最後(しんがり)を行く

 コースは十分圧雪されていますから、エネルギーの消耗は一番少なくて済みます。 ちょっとペースが落ちても、前の人は待っていてくれます。 ただ、何らかのアクシデント、極端な例では滑落や、深みに落ちたときは誰にも気づいてもらえないというリスクはあります。 また、前の一人が遅れた場合、その人に付き合う必要があります。先頭グループと大きく離れた場合は、遅れた人の体調を気遣い、また荷物を持ってあげるなど、必要に応じて適切な対処策を取る必要があります。

 ネイチャースキーの場合は、自転車のツーリングで先頭が入れ替わるのと同じように、先頭を行く人が順番に入れ替わることによって、先頭、中間、しんがりのすべての状態を楽しむことができます。
 もっとも、コースによっては、先頭としんがりは誰でもと良いと言うわけにも行きませんが、比較的安全なコースの場合は、自由に入れ替えができます。 その前提は、参加者全員が同じ立場にあるからです。

職場においては

 職場においては、みな同じ立場ということはあり得ません。ですから、通常並ぶ順番もほぼ固定されます。 長い時間のスパンで見れば、確かに入れ替わってはいます。 新入社員のときは、列の中間位置に配して守られ、管理職になるに従い、先頭を走ったり、最後で責任を持つなどの変化はあります。
 しかし、あまりに時間スパンが長いので、昇格、移動したときなどの一時期は別として、その動きを感じられない日常が続きます。特にいろいろな面での消耗の激しい先頭を、長期間突き進んでいるときは大変です。
 皆さんは、そのような場合、どうされていますか?

 私は、先頭を行くというポジションでしか味わえない、楽しみ、面白さを見出すことに努力をしたいと思っています。 面白く、楽しくやっていると、面白いものに遭遇する機会も増えるというのが持論です。
 ただ、時には後ろの人がきちんと付いてきてくれているかの確認は必要です。 でも、先頭が楽しそうに進んでいれば、続く人も「何か面白そうだ、楽しいことに出会えそうだ」とばかりに期待を膨らませ、付いて来てくれる可能性も高まります。
 少なくともそう信じて進みたいと思っています。

 人口の減少や多くの人間が職場を離れ、昼間の時間帯の繁華街が、休日と平日の区別がつかなくなるほど多くの人が行き交うようになる時節が、いよいよ眼の前に迫っています。 世の中の動きも、先を予測することがどんどん困難になります。
 でも、絶えず面白く、楽しめることを追い求めていれば、そのようなものに遭遇できるはずと思い、そう願って一歩一歩を踏み出して行きたいものです。

(更新:2005.02.01)