私にとって、春の訪れを告げる花と言えば春蘭です。
シンビジュームの仲間で、北海道から九州まで、乾燥した林地に広く自生しているそうです。
梅の花が散り出し、まだ遅霜が降りるぐらいの季節に、山里にほのかな香りを漂わせて咲き出します。
子供の頃、山々に取り囲まれた環境に住んでいましたから、ある朝起き出して顔を洗うとき、
井戸端に春蘭のかすかな香りを確認したとき、春の訪れを感じたものです。
現在は、毎朝の公園(田舎ゆえ、公園というよりも立派な森)のウオーキングで微かな香りに出会えます。
細く長い葉の間から、可憐な花を咲かせます。その香りが何とも言えず心地よいのです。
掲載のイラストは、私の春蘭のイメージで、薄い白い衣装に身を包む森の妖精のような感じを抱いています。
できるだけその花の美しさを表現しようとしたものですが、テクニックの稚拙さから、色の再現はともかく「可憐さ」などは実際の花とは程遠いものがあります。
テクニックを上達させれば、さらに美しさ、可憐さを伝えることは可能です。
香りの表現
では「香り」はどうでしょうか。これを言葉で伝えるのは至難の業というより、不可能に近いと思います。
たとえば、「春蘭は、微かに甘い香りです。」ではとても表しきれていません。
抽象的に「爽やかな香り」、「心地よい香り」などと誤魔化せば、さらに伝わらなくなります。
ならば、「○○のような香り」と例える手法を探してみます。花屋さんでの店先でも機会があれば香りを嗅ぐのが好きですが、
私の抱いている「春蘭の香り」には廻り遭えていません。何処まで言っても「春蘭の香り」になってしまいます。
私にだけ判る表記としては、「春を告げる香り」です。これでは第三者にはわからないのですが、
この辺りが言葉の限界かと思っています。
もっとも、「香り」でもかなり正確に言葉で伝えられるものもあります。
たとえば、「ヘクソカズラ」がその一例です。アカネ科の蔓性多年草で、漢字で書けば「屁屎葛」です。
もうこれで想像いただけると思います。この花は下の写真のように小さくて可憐な花です。
でも花を手に取って押し潰しでもしようものなら「おなら」、「うんち」ほど酷くはないにしても、名前の由来は理解できます。