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第24回 凛とした空気


突然の物音

 早朝の森の中をウオーキング中、バサッ、バサッ、バサーッと音がして数メートル先に何かが飛び落ちてきました。 いきなりのできごとに、飛び上がるほど驚かされました。
 落ち着いて見てみると、鳩より一回り大きな鳥が小鳥を足でがっちり押さえ込んでいます。 捕らえられた小鳥が足元で、間歇的に羽をばたつかせています。

猛禽類

 猛禽類と思しき鳥が小鳥を捕らえた瞬間に遭遇したのです。捕獲に成功した鳥(以降、彼と表記します)も私に気づいてこっちを見ます。
 彼と目が合った瞬間「手出し無用」と言われたように感じました。また辺りには凛とした空気が張り詰めているように感じます。  彼の眼光のその鋭さに、私はその瞬間から一歩も動けなくなったのです。
 ポケットからそっとデジカメを取り出して、その場所でシャッターを切るのが精一杯でした。
もし、私が彼に近づけば、彼は獲物を放り出して多分逃げるでしょう。 その結果、小鳥は助かる可能性もありますが、自然の営みを乱すことは許されないように思えて、じっと静観するしかありませんでした。

食物連鎖の頂点

 数十秒後、カラスが2羽偵察にやって来て、回りの木々に飛び移っては騒ぎ出します。
 カラスの鳴声も、いつも聞きなれているものとは違ってかなり険しいものがあります。
 彼は羽を広げ、獲物を覆い隠しながらも2羽のカラスの動向を見守るべく、上を見上げます。  猛禽類と言えど、地上でじっとしている状態の彼は、かなり無防備で危険です。 体長はカラスの方が十分に大きいでしょうから。
 この近辺では、カラスが食物連鎖の頂点だと思っていましたが、こんな猛禽類がいるとなると カラスも安穏としていられないはずです。
 だから自分たちの安全、あるいは縄張りを荒らす者がいれば、きっちりマークしなければならないはずです。 体の大きさから見て、カラスが襲われることはないでしょうが、それでも警戒は怠らず、スキあらば攻撃をしかけて、 自分たちの縄張りから追い出してやろうぐらいのことは考えているのではないかと推測できます。
 数分後、足元の小鳥のバタつきが止んだ頃、獲物を鷲づかみにして飛び去りました。
多分、巣にはお腹を空かした子供がいるのでしょう。
 家に戻って先ほどの記憶とデジカメの写真を元に図鑑で調べて見ると、ハヤブサにしては体が小さく、 また顔の表情から見て「ハイタカ」ではないかと推測します。

緊張感のある生活

 毎朝、平和な森をウオーキングしているつもりでしたが、きっちりと弱肉強食の世界が広がっていたのです。 捕えられる方だけでなく、捕らえる方も生きるか死ぬか、必死に生きているのです。
 「平和ボケ」と言われる現代であり、私はこのような緊張感とは無縁の生活を日々送っています。
しかし、今朝の光景を目の当たりに見て、生きることがいかに大変なことなのか思い知らされました。
 悲惨な戦争の経験もなく、兵役義務もない時代に生まれ育ったことは、幸せなことです。
でも、緊張感とその緊張から解き放たれたときの開放感や歓びは味わうことはできません。
 せめて、「今、生きている」ということを実感しつつ、潰れてしまわない範囲の緊張感を持ち続けて生きたいと思います。
 「無為無策な日々」とまでは言えないにしても、それに近いような日々・時間を費やすことは堅く慎もうと思わせるような出来事でした。

約20秒のムービー(.wmvファイル)です。再生ボタンを押してください。



(更新:2005.5.1)